広島県農業ジーンバンクの廃止
最近、広島県農業ジーンバンクの廃止が決まったとのニュースがありました。
広島県農業ジーンバンクは、広島県内で栽培されている農産物種子の保存とその再活用を目的として1988年に設立されました。
現在では、1万8600点の種子が保管されているそうです。
日本は北海道~沖縄と南北に長い地形です。
地域毎に気候、環境が大きく異なります。
特定の地域で栽培された野菜や穀類の種子を地域内で引き継いでいく、大変に重要な役割を担っていた組織だと思います。
ジーンバンク廃止の理由は資金不足のようです。
冷蔵庫の運用費用が捻出できないとどこかで読みました。
電気代が爆上がりの昨今です。今後の運営に支障をきたしても不思議ではありません。
「家庭菜園」は種子保存方法のひとつ
私が「農業」ではなく「家庭菜園を広める活動」にこだわるのは、同様な課題(遺伝的多様性の確保や、種子保存)に対しての解決策になるのでは?と思うところがあるからです。
農家さんは業として活動するので、利益を出すことが目的です。
残念ながら、手間やコストを負担してまで種子を後の世代に残すことにはそれほど熱意を持っていません。
農家さんは「F1(雑種第1世代)」という雑種の種子を毎年購入します。
病気、害虫に強いなどの特性をもちながら、形質も揃うので一斉に出荷できるからです。
F1は雑種なので、次の世代の形質はバラバラ。なので、翌年の種子はとれません。
在来種・固定種の種子を次の世代に残すには、その手間や保管コストを受け入れられる人たちが必要です。
利益を求めない家庭菜園には無駄や非効率を受け入れる寛容さがあります。
- ホームセンターで購入する単価の高い肥料、資材
- 不効率な多品目栽培
- 不格好な収穫物
家庭菜園で作るモノと同じ品目なら「断然、買った方が安い」です。
家庭菜園の醍醐味は、経済的な効果ではなく、心理的な効果です。
野菜を「養う」のが農家さんなら、「はぐくむ」のが家庭菜園家だと思います。
見た目の悪い株や、育ちの遅い株にも寄り添える人、それが家庭菜園家です。
殆どの種子は海外から輸入されるので、いずれ肥料や農薬のように価格も上がるでしょう。
そうなれば固定種・在来種の種子を欲しがる農家さんも出てきます。
自分で種子をとって“コストを削減するため”です。
しかし、その時には、このニュースのように国内には固定種・在来種の種子が残ってない・・・という状況になっているかもしれませんね。
利益を出しながら外部要因の影響を抑える、うまい落としどころを探っていく農業が求められています。